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甲姫-KOUHIME-(8)

2007-04-27

   第一章 融魂-YUUKON-()



「継承形態が、今回の事態を引き起こした?」
 秀次に変わって、問いかけたのは、横にいた唯だった。天の甲姫の器である天上菊美が死んだ、いや、殺された理由。それが継承形態にあるとはどういうことなのか、唯も興味があった。
 地の甲姫の魂を融合しているという司条玉緒が唯の問いかけに答える。
「天の甲姫は一代置きに直系の嫡出女子へと器を変える。だから、天上菊美の母親は何も知らないし、前の器であった祖母もあまり詳しくは語らない。時が来れば、彼女の中にいる天の甲姫が目覚めるが、実践のとき以外、ほとんど何も語ろうとはしない。だから天の甲姫は『沈黙の姫』ともいう」
「でも、天上は恋をしないようにとおばあちゃんから聞かされ続けていたって……」
 玉緒の説明に、秀次が口を挟んできた。彼女は視線だけを唯から秀次に移して、問いかけに答える。
「それだけが天の甲姫が先代の器から離れるときに記憶の中に残していくこと……。だからこそ、菊美の祖母は、それしか言い続けることができないのだ」
「それじゃ、曲がり道五本前でも、気配を察知できるというのは?」
 この問いかけを聞くと、玉緒も、八重も、ため息をついた。
「君にそこまで話をしていたとは……先代の言霊の力よりも、君への思いが勝ってしまったということか……」
「え?」
 自分は何か言ってはいけないことを言ってしまったのだろうか? 秀次がポカンとすると、八重が口を開いた。
「甲姫の力が失われてしまったとしても、言霊の力だけは残り続けるはずなんだ。だからこそ、菊美はそれに縛られ続けて、恋などしないはずなのに……何がそれを打ち破ってしまったのか……」
「しかも、先代よりも今君の隣にいる人物の警告のほうが、言霊の呪縛となってしまうとは……何かが運命の歯車を狂わせたとしか思えない……」
 八重の言葉の後を、玉緒が続ける。
「しかも萩角秀次とだけ話をしたかったのに、われわれが張った結界2つを、らくらくとすり抜けてこの場にいる人物がいるんだからな……。まあ……その理由は見当がつくが、ごくごくまれにしか起こらない例だからな……」
「僕がここにいる理由が、ごくごくまれにしか起こらない例?」
 自分のことを言われて、唯が疑惑の目を玉緒に向ける。
「聞きたいことがあるのだが……そなた、兄弟姉妹、または従兄妹たちの中に、勘がよくあたるとか、神社や寺の要職についている人物はいるか?」
「え? ……確かに姉さんが勘のよさをかわれて、神社の養女になって、今、宮司代理を務めているけれど……それが何か?」
「やはりそうか……」
 玉緒が急に黙り込む。
「何? どしたの?」
 秀次が唯と玉緒を見比べていると、八重が口を挟んできた。
「玉緒。かかわった以上、話さなければいけないことだ。きっぱりと話しておくべきだ」
 その一言に押されて、玉緒はわずかに笑みを浮かべてから、唯に言った。
「君たちの一族は……断絶した乙姫の家系だ。そしてその力が千年以上のときを経て、現代によみがえった……。ここで実際に顔を合わせる羽目になろうとは、不思議なものだな」
「断絶した……乙姫の家系?」
 言われても、わかることではない。唯もこれにはさすがに首をかしげた。
「乙姫って……浦島太郎に出てくる、海の中にある竜宮城の主である、美しい女の人のことだよね?」
 秀次がそういうと、玉緒と八重は急にくすくすと笑い始めた。
「何だよ! 笑うことはないだろう!」
「す……すまない……だが……」
 笑い終えてから、玉緒は秀次の問いかけに対する答えをつむぎ始める。
「その竜宮城や乙姫に関する伝説が、海のないところにもあるということは、知らないのか?」
「え……?」
 秀次の反応に、今度はため息をついて、話を続ける。
「事実、海が存在しない群馬県にも、竜宮城や乙姫の伝説はあるんだ。亀の迎えこそないものの、実際に竜宮城に行ったというものや、乙姫と文通したとか、竜宮城があるといわれる池に借りたいものを紙に書いて水面に浮かべると、その紙が池の中に吸い込まれ、しばらくして注文の品が浮かんできたという話がいろいろある。もっとも、借りた品はきちんと期日に返さないと、それっきり竜宮城や乙姫との関係も絶たれてしまうようだが。
 早い話、乙姫は一人ではないということだ。そしてこの現代にまで血をつなげてきた乙姫たちが、日本の各地に存在している。もちろん、途中で断絶してしまった家系もある。私もまさか力の復活した者をこの目で拝めるとは思っても見なかったがな」      (続)
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テーマ : 自作連載小説
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ありさという名前は、オンラインゲーム『ラブネマ』の中でのキャラクターネームです。雑誌投稿などでは、他にも様々なペンネームを使っています。

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