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甲姫3 空の乙姫-KUU NO OTOHIME-(16)

2010-04-30

   第四章 親玉-OYADAMA-()



 秀次は宿泊室の一室で、学生服から白い小袖に白い袴に着替えると、同じ白い小袖に袴姿の松浦に案内されて合宿所を出、滝つぼにやって来た。すでに松浦の叔父の滝音も小袖に袴姿で待っていて、手桶を持っている。
「やあ、やって来たね。今日は初めての日だから、いきなり滝つぼに入ることはしないよ。ここの水を浴びて、集中力を高めよう」
 滝音は笑顔でそう言ったが、秀次は「は、はあ……」というのが精一杯で、滝を見つめ、いずれは集中力をより高めるために、この滝に打たれるんだろうなぁと思った。
「それじゃ、ここにある木の板の上に座って。凪も手本を示すために一緒に座って」
「え? 叔父上、ぼ、僕もですか?」
「触媒としての先輩なんだから、凪が手本を見せないといけないからね。それじゃ、正座で座って」
 笑顔を浮かべている滝音を見て、秀次と松浦は硬い表情で、松浦が滝に向かって左側に座り、少し間をおいて、秀次が右側に座った。
「僕たち触媒は、戦っている乙姫のオーラと同調し、彼女の力を高めるのが役割だ。僕たちがいるのといないのとでは、乙姫たち-松浦は地の甲姫様だけど-の能力は、時に雲泥の差が生じることがある」
「あの……それで聞きたいことがあるんですけれど……」
 秀次は思い切って尋ねてみることにした。
「どうしたんだい? 萩角君」
「乙姫の能力を上げるために集中している間、妖怪とかが俺たち触媒の方を狙ってくることもありますよね?」
 秀次が言うと、滝音は、
「その心配はないよ。触媒能力者の周囲には常に結界が生じていて、乙姫の能力を上げるためにオーラ同調をしているときには、結界も強化される。どんな妖怪でもそれを破ることはできない。たとえ地下から襲おうとしてもね」
「でも……」
 秀次が不安そうに言うと、今度は松浦が口を開いた。
「叔父上や僕は合気道の心得がありますけれど、それは妖怪たちと戦うためでなく、気の流れを感じ取るために学んだものです。秀次さんは体操部に所属していて、演技をするときには集中するでしょう? 二つは違うように見えて同じなんです。だから秀次さんが心配することはありませんよ」
「そういう……ものなのかな……」
 秀次が相変わらず不安そうなのを見てか、松浦がポンと肩を叩いた。
「心配のしすぎですよ。僕たちは集中すると同時に、乙姫の援護と自分の護りを同時にできるんですから」
「そういうものかな……」
「それじゃ、僕が集中しているところを見てください」
 そう言って松浦が両手を合わせて集中すると、オーラとともに楕円型の結界の力が強くなるのを感じた。
 自分の場合は天の甲姫の魂が融合しているから、松浦よりも結界の力は強いだろう。だが、彼女が復活したら、力は弱まるのではないだろうか?
 秀次がそう考えていると、滝音が水を汲んできて、松浦の身体にかけた。
 冷たそうな光景に秀次は思わずゾッとなったが、松浦は動こうとしない。もう滝に打たれて修行するくらいだから、これくらいはなんともないのかもしれない。
 と、思ったのだが、松浦は合わせていた手を離して、その両手で反対側の二の腕を握った。
「叔父上、水をかけるのなら、先に声をかけてからにしてください!」
「それじゃ、秀次君に集中しているところを見せる意味がないじゃないか。第一、集中しているときには声は聞こえないものだろう?」
「そ、それはそうですけれど、まだ集中しきっていなかったんですよ」
「それじゃだめじゃないか。戦いの時にはすぐに集中しないといけないんだから。地の甲姫の触媒である凪なら、わかっているだろう?」
「わ、わかっていますけれど……」
「だったら、凪も修行が足りないよ。あ、秀次君も集中して。いきなり滝に打たれるのは無理だろうから、ここから汲む水をかけるからね」
「は、はい……」
 秀次も言われるまま、両手を合わせて、目を閉じ、一点をイメージして、そこに意識を集中させた。
 そうすると、自分を護っている結界が強くなっていくのを感じる。地の甲姫である玉緒と、人の甲姫である八重が言ったことは正しかったのだ。集中すれば自分を襲おうとする悪霊たちを追い払える……。
 冷たい水がかかったのは、そう考えていたときだった。
「冷たい!」
 秀次も松浦同様、思わず声を上げてしまった。松浦と同様、合わせていた両手を解いて、反対側の二の腕を握り締める。
「おやおや、まだ集中力が足りないみたいだね。二人とも、水はランダムにかけるから、きちんと集中しているように」
「はい!」
 思わず秀次と松浦は声を合わせて、集中した。
 両手を合わせて、集中している間、滝音が二人にランダムに水をかけていた。
 秀次は水の冷たさを感じると、合わせている両手を危うく離しかけたが、集中力を乱すまいと我慢した。
 しばらくして秀次が隣にいる松浦の方を盗み見ると、彼は水をかけられても合わせている両手を動かすことなく、集中している。これが無我の境地というものなのだろうか。
 自分が松浦のこの域まで達するにはどのくらいかかるものだろうか。
 そう思った瞬間、水がかかると同時に、滝音の声がした。
「萩角君、集中力が落ちているよ。もっときちんと集中して!」
「は、はい!」
 秀次は改めて両手を合わせて集中し、身体にかけられる水の冷たさを感じながらも集中力を崩さないように努力していた。(続)
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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ありさという名前は、オンラインゲーム『ラブネマ』の中でのキャラクターネームです。雑誌投稿などでは、他にも様々なペンネームを使っています。

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